ドキュメンタリー番組「教育と愛国」は、小中学校で新教科として導入された道徳教育を巡る昨今の議論を、非常に批判的な視点で伝えている。この番組は、国が作り出した価値観と価値観教育の意義と必要性を巡る議論の高まりを受けて制作された。道徳教育が政治的な強い圧力の下にあるのは明らかであり、そこで目的とされているのは、日本人としてのプライドに欠けているとされる若者の国家意識を高めることである。しかしながら、ナショナリズム(または愛国主義)は教科書の中で様々な形をとって現れ、「友達と仲良くしよう」といった記述や、オリンピック選手の勝利を讃える記述等、普遍的な価値にあたる内容も含まれている。ここでは、(国家統制主義的とまでは行かずとも)国家中心的なレトリックは安倍政権の下での道徳教育の背後に鳴りを潜めており、これを批判しようとすれば「反社会的」「反日」といったレッテルを貼られるリスクを犯さなければならない。